【志摩病院での私と研修派遣までの過程】
三重県立志摩病院の薬剤室所属の南です。
私は新卒から当院で勤務を続けており、今年で8年目となります。志摩病院は地域包括ケア病棟を含む内科・整形外科・眼科・泌尿器科・外科・精神科の入院病棟があり、中でも精神科の入院病棟があるのが特徴の病院となります。
当院の薬剤室は若手メンバーが多くを占め、薬剤室の人員は入職当初から増えては減りといった状況で、マンパワー的にできない業務が多々ある状態でした。
そのような状況の中で私が一番勤務歴の長い状態となっていました。私自身、発注・薬品選定・備品・レジメン・システム/マスター管理など幅広い業務を担当させて頂いておりましたが、自身の経験や今後の当院のこと、後輩となるスタッフの指導等も考え、かねてより当院ではできていない業務(病棟業務・実習生の受け入れ等)や他施設での取り組み方を学びたいという思いがありました。
そのような状況の中、本部レジデント管理チームが当院を訪問された際に、薬剤部会の鈴木代表から短期相互研修のお話も伺ったため、私の希望をお伝えさせていただきました。
今回は当院の人員の事情により、志摩から奈良への一方通行の短期研修となりましたが、関係者各位にご配慮いただき、12月中に今回の研修が実現致しました。
【市立奈良病院で1週間の研修】
短期研修プログラムは2023年12月11日(月)~15日(金)に市立奈良病院での研修となりました。
奈良病院は志摩の薬剤師スタッフが5名程度なのに対し、20名前後のスタッフがおり、当然扱う業務量も多く、志摩にはない呼吸器内科/外科・感染症科・血液内科・小児科の入院病棟や機器があるため、良い刺激を受けられるのではと期待して赴きました。
1週間の研修の内訳は下記にお示しするスケジュールに沿って行われました。
初日の12/11は主に院内や機器の見学をさせていただきました。
奈良病院と志摩の調剤・機器システムは、電子カルテこそ異なるものの、私の入職以前に奈良病院の先生方が長らく支援に入って頂いていたこともあり、似た部分も多々見受けられました。
しかしながら、人数が多いながらも、積極的に業務効率化を進められており、調剤にかける時間を最小限として他の業務に充てられている点が印象的でした。
注射薬のピッカーを始めとする大型機械のみでなく、調剤機器設定・運用面でも工夫を凝らされていました。
この点は薬剤師スタッフの少ない志摩には非常に有効と思われ、今この記事を書いている間にも並行していくつか取り入れさせていただきました。
2日目は化学療法の調整とICTラウンドの見学をさせていただきました。
化学療法の調整は志摩でも取り扱っているのですが、消化器や乳がん・前立腺がんが中心となっており、血液内科・呼吸器関連のレジメンは初見のものが多く新鮮でした。
また、調整件数の圧倒的な多さとそれをさばくスピードにも驚きました。実際に化学療法の初回導入の方に指導もさせていただき、志摩では算定できていない外来化学療法連携充実加算の取り組みやトレーシングレポートの取り扱い、指導の上の注意点についても学ばさせていただきました。
ICTラウンドの見学では、奈良病院は志摩よりも上位の感染対策向上加算1を算定されており、私自身がICT業務の経験がなかったので、ラウンド時のチェック項目や考え方なども非常に勉強になりました。
3日目は実務実習の受け入れ、DM教室、発注、システム管理について案内頂きました。
志摩では、私の入職以降は実習生を受け入れたことがありません。
そのノウハウは皆無に等しい状態でしたが、県薬剤師会の要請もあり受け入れに向けて働きかけている状況です。
実習の受け皿を整えることで将来的な人員増も望めるのではないか?という思いもあり、今後力を入れていきたい業務でもあります。
丁度、実習期間中の学生さんもおり、実際の受け入れの流れやシステムの操作方法、学生が大学でどのようなことを学んでやってきているかを知ることができ、非常に参考となりました。
かつては私自身も実務実習に参加した身ではありますが、10年前とは大幅に異なっていることを痛感しました。
このことは今後の実習生受け入れの整備に大いに役立てたいと感じています。
DM教室、発注、システム管理につきましては志摩でも共通の業務となりますが、教室の取り組み方や、昨今の悩ましい供給状況への対応。
高額薬剤の在庫量にも驚きましたが、スズケンのキュービックスが導入されていたり、同じユヤマでも新しいバージョンとなっていたりと、当院だけでは見られない情報に溢れており、視野を広げるよい機会となりました。
4日目は病棟業務と持参薬のシステムについて、実際の服薬指導・鑑別も含み案内をして頂きました。
志摩では持参薬の鑑別自体は行っていますが、マンパワーの不足からインスリン指導などの単発のみの服薬指導に留まり、本格的な病棟業務はできておらずノウハウに乏しい状態でした。
一連の流れを見せていただき、また実際に指導もさせていただきました。この中で初回面談や面談表や鑑別システムの運用は非常に参考となりました。
志摩では地域柄、高齢者の入院患者さんが多いため、必然として認知機能が低下した患者さんが多い状況にあります。
このような患者さんに病棟の薬剤師として関与するのかという点が自分の中で非常にネックとなっていました。
実際に流れを見せていただくことでそのような患者さんへの対応方法を学ぶことができました。
また、認知レベルや急性期のつらい状態の患者さんに指導の内容を合わせる方法や重要性を改めて認識することができ、初心に帰ることができました。
午後からはNSTラウンドにも同行させていただき、ここでも自身のNST業務への経験がなかったことから、どのように薬剤師として介入しているのかといった点は勉強となりました。
同時に奈良病院での多職種連携を見せていただいたことも参考となりました。
5日目は主に私自身の希望に沿って案内していただけることとなり、レジメン管理、システム、ICTについて追加の案内をお願いさせていただきました。
レジメン管理・システム面については実際の業務上、頭を悩ませることが多い業務です。
今後の医療安全面や業務効率にも直結すると考えたため追加をお願いしました。
この中で、志摩で組んだレジメン、システムの考え方や関与の仕方など、今までの考えが間違っていなかったという点や、このような考え方もあるのかという点も確認でき非常に有意義でした。
また、ICT業務では特定抗生物質の届出の管理やカンファレンスの参加など、ラウンド以外のICT担当者としてするべき業務についてご教授頂きました。
今後、私がICT業務を担当する可能性も高く、今回学んだことを活かせればと感じています。
【研修を通じて】
これまで、志摩では人数の制約上、どうしても複数の業務を万遍なく行うことが求められていました。その中で得られる経験値もあるのですが、中々ひとつの業務を深く行うことができないという葛藤がありました。
そのため、今回の研修では他施設での取り組み・より深い業務について学ぶことができ、非常に価値があったものと感じています。
当院の薬剤室も残念ながら、これからさらに人数が減ってしまう予定となっていますが、人数が少ないながらも効率化できるところは効率化を行い、各種業務をより良いものとして薬剤師の立場から持続可能な地域の医療に貢献できれば幸いです。
また、今回の研修を通じ、奈良病院の先生方と顔の見える関係性を築くことができたことも幸いです。
このことは今後のレジデント受け入れにも活かしたいと感じています。
最後となりましたが、この短期研修に際してご配慮いただいた、本部医療人材部の谷口課長、薬剤部会鈴木代表および関係各位の先生方、また快く受け入れ下さいました市立奈良病院の薬剤室長の山崎先生並びに御指導頂いた各先生方にこの場を借りてお礼申し上げます。